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活動レポート2026.08.30読了 約6分

地方創生に、大きな会場はいらなかった。シャッター商店街の駄菓子屋で、eスポーツ大会をやった話

地方創生に、大きな会場はいらなかった。シャッター商店街の駄菓子屋で、eスポーツ大会をやった話

2026年8月29日、土曜日。
生駒駅南口「いこみなエリア」の駄菓子屋、チロル堂本店で、駄菓子屋eスポーツを開きました。4月の南チロル堂から始まった大会が、いこみなプロジェクトに加わって、商店街のまんなかに場所を移した最初の日です。

地方創生に、大きな会場はいらなかった

「eスポーツで地方創生」
最近、よく聞くようになった。

たいてい、こういう絵になる。
大きなホール。プロゲーマーを招致。最新の機材がずらっと並ぶ。
当日は、人がどっと集まる。ニュースにもなる。

で、翌週。
街は、だいたい元通りになっている。

これは、批判じゃない。
僕も、いつかそういうイベントをやりたいと思っている。
大きなイベントにしか作れない景色は、確かにある。

ただ、その前に。
定員20人の駄菓子屋で分かったことがあるので、書いておきます。

舞台は、シャッターの降りた商店街

場所は、奈良県生駒市。
生駒駅の南にある“いこみなエリア”。
生駒駅の目の前にそびえたつ生駒山の、その麓。昔ながらの商店街だ。

例に漏れず、シャッターの降りた店舗が多い。

近所の人には、愛着がある。
でも、隣の地区からわざわざ来るほどじゃない。
このままだと、いつか本当にシャッター街になる。
そんな気がする場所。

この通りを、もう一度盛り上げようとしているのが「いこみなプロジェクト」だ。

僕たち「街じゅうアリーナ」は、今年そのチャレンジチームに加わった。
4月と7月に南生駒でイベントを重ねて、今回、舞台がここに移った。

会場は、eスポーツ施設でもゲームセンターでもない。
「チロル堂」という、駄菓子屋だ。

昼はランチができる駄菓子屋で、夜は大人が集う酒場。
そんな店が、今回eスポーツの会場になった。

チロル堂本店に集まった子どもたち

定員20人に、20人以上が来る

店の広さ的に、20人が限界だった。

正直に言うと、前日まで不安だった。
商店街のイベントなんて、だいたい大人の自己満足で終わる。
そう思われても仕方ないよな、と思いながら当日の朝を迎えた。

結果、20人以上が来てしまった。

やったのは、フォートナイト大会と、東京工芸大学ゲーム学科が開発中のゲーム「じゃんけん鬼eスポーツ」のトーナメント。

フォートナイトは、この部屋に来た子だけのカスタムマッチ。
つまり、勝者はこの部屋の誰かから、必ず出る。

ビクロイした瞬間の、

よっしゃーーーー!

っていう叫び声と、ガッツポーズ。

その瞬間、その子は、部屋のヒーローになった。

ここからが、本題だ。

僕が一番いいなと思ったのは、勝った子じゃない。
負けた子の顔だった。

悔しそうにしながら、その勝利を、一緒に浴びている。
悔しさの中に、ちょっとした憧れが混じる。

「次は、自分があそこに立ちたい」

そういう顔をする。

ひとり生まれると、次の候補が生まれる。
20人の部屋は、それくらい濃い。

1000人の会場では、これは起きない。
勝者と自分の距離が、遠すぎるからだ。

画面を囲んで大会を見守る子どもたち

東京から、大学が来た

「じゃんけん鬼eスポーツ」は、まだ発売していない。
この部屋にいる全員が、初めて見て、初めて触るゲームだ。

ルールは単純。
じゃんけんと、鬼ごっこを合わせたゲーム。
自分より弱い手の相手を捕まえて、ポイントを稼ぐ。
フィールドには手を変えるアイテムがランダムに出るから、拾って、変えて、攻める。

それだけ。

この活動に共感してくれた東京工芸大学 ゲーム学科の中村教授と、生徒さんが、この日の為に東京から、わざわざ来てくれた。

自分たちで作ったゲームを、子供たちの前に、そっと差し出す大人。

子供にとって、これはちょっとした事件だ。

「この人たちが、作ったんだ!」

憧れって、たぶんこういう順番で生まれる。
目の前に、本物がいる。
次に、自分もやってみたくなる。

二人一組、全11チーム。
そこで初めて会った子同士のチームもある。
ゲームをほとんどしない大人も混ざっている。

それでも成立した。

フォートナイトで勝った子のチームが優勝候補かと思いきや、まさかの初戦敗退。
操作がうまいだけじゃ、勝てない。

ちなみに優勝したのは、普段はスカしてる僕の息子だった。

しゃーーーー!!!

家では、あんな声、出さない。

主催者としてじゃなく、親として、その日は、うれしかった。

「神ゲーです」

片付けをしているとき。

参加してくれた子が、中村教授に伝えたいことがあるらしく、モジモジしながら、最後まで残っていた。

そして、こう言った。

じゃんけん鬼eスポーツは、神ゲーです

これはたぶん、子供が、大人に向かって言える最大級の言葉だ。

その瞬間、中村教授は、その子にとってのヒーローになった。

作った人が、遊んだ人のヒーローになる。

「関係人口」って言葉があるけど、実物は、たぶんこういうことだと思う。

この日、東京の大学と、生駒の子供のあいだに、一本、線が引かれた。

中村教授と子どもたち

集めるのか、打つのか

街じゅうアリーナの特徴は、たぶん、これだ。

誰でも、ヒーローになれる。

優勝した子はなる。
その子に憧れた、次の子もなる。
ゲームを作って持ってきた大人も、なる。

受付をしただけの人も、
イスを並べただけの人も、
となりで一緒に叫んだだけの人も、
その日、誰かにとっての、そういう存在になっている。

大きな会場も、有名なプロゲーマーもいらない。
手伝ってくれるだけで、生まれる。

しかも、消えない。

大きなイベントの主役は、その日で終わる。
会場が片付けば、みんな帰る。
次に会うことは、たぶん、ない。

でも、ここは当たり前に集まれる場所だから、一緒に出場した仲間と、また会える。
「あの時さ」って言いながら、また一緒にプレイする。

一回きりの主役じゃない。
通い続ける、ヒーロー。

つまり、こういうことだと思っている。

大きなイベントが人を“集める”なら、
小さなイベントは、街に点を“打つ”。

ヒーローがひとり生まれる。街に、点がひとつ打たれる。
憧れる子が出てくる。点が、また増える。
仲間がまた集まってプレイする。点と点が、つながる。

集客は、その日で減る。
点は、減らない。

これは、生駒じゃなくてもできる

ここが一番書きたかったところです。

この日にかかった、大きな予算はない。

会場は、商店街の店舗を貸してもらっている。
機材は、共感してくれた企業から無償で借りている。
運営は、面白がってくれた大人が手伝ってくれている。

必要だったのは、たぶん、この3つだけだ。

  1. 20人が入る場所(空いている店舗で足りる)
  2. 一緒に面白がってくれる、地元の大人が数人
  3. 「20人でいい」と割り切る覚悟

3つ目が、一番むずかしい。

企画書を書くと、どうしても人数を盛りたくなる。
100人と書いたほうが、通りやすいから。

でも、100人集めた翌週に街が元通りなら、その企画書は、何のために書いたんだろう。

正解かどうかは、まだ分からない。
5年後に「あれは自己満足だったな」と思う日が来るかもしれない。

でも、街をゆっくり色づけていくのは、一発の大きさじゃなくて、打たれた点の、数のほうだと思っている。

小さな点が集まって、いつか、街の絵になる。

シャッターの降りた商店街の、駄菓子屋の奥から、子供の「よっしゃーーー!」が響く。

その声が響いた分だけ、この通りに、ヒーローが生まれていく。

たぶん、それだけで、この日は大成功だ。

来月も、僕らはこの商店街にいます

同じことを、自分の街でやってみたい人。
機材でも、場所でも、当日のイスを並べるだけでも、関わってみたい人。

よかったら、声をかけてください。

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